印傳の唐草―つる草の曲線美―

唐草は「絡み草」を略したものともいわれ、植物のつるや葉などが波状に伸びたり絡み合ったりしながら連続している様子を図案化した模様が唐草模様です。写実的に描かれたものから同じパターンを並列、または輪繋ぎにした抽象的なものまで多種多様あり、華やかな装飾模様の一つとして知られています。唐草模様の歴史は古く、日本では古墳時代に中国大陸などから伝わったようです。出土品の鏡や瓦、仏像の宝冠や光背に唐草が描かれ、仏教美術をはじめ正倉院の宝物、漆工芸品など皇族や貴族の調度品を通じて技巧を凝らした様々な唐草模様を目にすることが出来ます。唐草のモチーフには忍冬・葡萄・牡丹・蓮華などが古くから用いられ、平安時代以降は菊・桜・梅・桐などの和様化した唐草が創案されました。
鹿革工芸の古典資料における唐草模様は、型紙を用いて漆で模様を描く漆付技法と染めの技法によって見ることが出来ます。漆付技法の菊唐草はリズミカルで細やかな線を点と空間によって表現し、全体の構成は落ち着いた印象です。また染めの技法では花弁は濃赤、つるや葉は青緑色で描かれた花唐草の模様が多く、躍動感や生命力に溢れた姿をしています。
唐草模様は時代や国境を超えて現代の人々に愛され続けています。伝統模様から創作模様まであるつる草の曲線美を鹿革工芸品でご覧ください。
【印傳の唐草 ―つる草の曲線美— 令和4年6月25日(土)~9月11日(日)】
*7/16~8/31小・中学生入館無料