印傳の物入れ―巾着から信玄袋へ―

日本では『古事記』に袋を背に負う様子が描かれ、物を包み携行することが表されています。
鹿革の物入れには、包むものや容器・入れて携行するものなどがあり、風俗や服装に合わせた様々な資料が遺されています。代表例である巾着は、金銭や薬・火打石(ひうちいし)といった大切な物を帯に提げて持ち歩きました。袋の口を紐(ひも)で括(くく)る形も多様で、襞(ひだ)をたくさん重ねていく仕立てや、紐の結び方を変える細工などもご注目いただきたい装飾です。信玄袋は底マチのある明治中期に流行した袋ですが大きさや紐の括り方などに派生が見られ、当時の需要に合わせた洒落や美しさを追求する工夫を感じます。
鹿革は丈夫で、加工のし易い革といわれています。染色の技術を駆使し、時代が求める袋物を生み出す創意と細やかな手仕事は現在の燻・更紗・漆付け技法にも通じるところです。
今回は印傳の物入れの古典作品を各種陳列しています。色や形と共に様々な意匠もご覧ください。
【印傳の物入れ-巾着から信玄袋へ- 令和4年3月5日(土)~6月19日(日)】