印傳のさまざま―花の模様―

印傳のさまざま―花の模様―

日本には四季があり、移り変わる自然に感応する繊細な感覚が育まれてきました。花に対する独特の感性は日本特有の美意識と考えられ、花の模様は古くから人々に愛されて多種多様な工芸品に取り上げられてきました。
日本の春を代表する桜は散り際の潔さが武士に好まれ、鎌倉時代には「小桜威」(こざくらおどし)などの鎧(よろい)の一部の模様に表されています。菖蒲は香りが強く、根を健胃薬として用いられたことから疫病を防ぎ、邪気を払ういわれがあります。細く伸びた葉の様子は剣に例えられ、魔除けや開運をもたらすとされていました。さらに「勝負」「尚武」(しょうぶ)に音が通じることから武具の模様に多用され、意匠(いしょう)も変化に富んでいます。
不老長寿のいわれや「齢草」(よわいぐさ)の異称を持つ菊は、秋を彩る花として香りと共に好まれ、模様だけでなく紋章としても多く用いられています。印傳の植物模様は、花や枝や蔓を忠実に描いた具象的表現だけでなく、細部を省略して図案化した模様が多く見られます。

平成26年6月21日~9月15日(この展示は終了しています。)