印傳の模様―点と線―

印傳の模様―点と線―

印傳や鹿革工芸品には点や線から構成された模様が多く伝えられています。

型紙を用いて漆を付ける甲州印傳では、型紙の強度の保持や漆の剥離を防ぐ為に細かい点状の模様によって様々な意匠を表現してきました。三角形や正方形・円等で作られる幾何文は仏教美術とともに大陸から日本にもたらされ、時代が下るにしたがって和様化され、吉祥や魔除けの意味を込めて用いられました。一例を挙げると、長寿延命を表す模様として親しまれている「亀甲」は六角形が亀の甲羅に似ていることによって称されています。

一方、縞は茶人にもてはやされ、江戸時代に入ると粋や渋好み反映する模様として流行しました。縞模様を表す印傳の典型的な技法が燻による「糸掛け」です。鹿革に糸を巻き、藁の煙で燻すと糸で防染された部分の縞模様が表れます。

連綿と続く点や線等の連続模様は途切れや隙間がないことから瑞祥的意味も伴い愛用されています。さらに、模様の重ね方を変えることにより視覚も変化し、日本人の感性に多様な連想を呼び起こします。

平成28年6月11日~9月11日(この展示は終了しています。)