印傳の燻ー褐色の階調ー

鹿革は柔らかく、模様付けなどの加工がしやすい特長があり装飾性をもたせることができます。燻技法はわら松脂まつやになどをかまどに入れいぶし、上部の穴から出る煙を太鼓たいこと呼ぶつつに貼った革にあてる作業を行います。これにより鹿革が柔らかくなり、茶褐色系ちゃかっしょくけいの色や模様を施すことも可能となり、稲作いなさくの盛んな日本で鹿革の利用と共に古くから行われていました。煙で革を染める起源きげんは明らかではありませんが奈良時代の正倉院しょうそういん宝物ほうもつにも燻す技が用いられたと考えられています。燻した鹿革は「くすべがわ」「ふすべがわ」とも称され、燻鞠ふすべまり燻革威ふすべかわおどしとして蹴鞠けまりの鞠やよろいおどしなどに用いられました。また時代が下るとその実用性からはかま火事装束かじしょうぞく足袋たびなどにも活かされるようになりました。
主な材料には稲藁いなわらが使われ、松葉まつば松根しょうこんを入れて色の濃淡のうたんや定着を図り、材料や煙をあてる時間等によって淡い茶色から鼠色ねずみいろ鶯色うぐいすいろまで染め出すことが可能です。さらに模様を施すには「糊置き」「糸掛け」があり、糊や糸の部分が防染ぼうせんされて白い模様が表れ、糸の巻き方の工夫によってしまだけではなく格子こうし鶉巻うずらまきなど多様たような模様が生まれました。
煙で鹿革に色や模様付けを行う伝統的な染革の技は、柔らかな褐色の階調かいちょう独特どくとくな模様を表現しています。

【鹿革の装飾 ー紋章ー 令和7年11月22日(土)~令和8年2月15日(日)】
※休館日令和8年1月1日・2日