提物―洒落た莨入―

提物は日本の服装の文化と大きく関係し、発達しました。元は巾着から始まったとされ、火打石や金銭・薬などを入れた袋が用いられました。携行する際は着物の腰帯に提げ、紛失や盗難を避けることも出来たと言われています。
提物の一つである莨入れは喫煙文化の多様化によって生み出されました。刻み莨と煙管による喫煙は江戸時代に盛んになり、富裕層の嗜みだったものから徐々に町人にも広まっていきました。初めは、たばこ盆と長い煙管などを用いた室内における喫煙習慣でしたが外出先でも愉しめるようにと様々な莨入れが考案されました。
莨入れは主に叺(かます)という刻み莨を入れる袋状の部分と、煙管を入れる煙管袋によって構成され、腰に提げる形式に合わせていくつかの形があります。素材には革や布を始め様々な材が用いられ、属する金具や根付にも装飾が施されました。粋や洒落といった当時の人々の趣向が反映され、高度な職人の技巧を結集した作が莨入れといえます。
鹿革の莨入れは主に男性用に作られたものが多く、一見無骨にも見える大胆な仕様の例や繊細な女性用の懐中莨入れまで多種存在しています。表面に漆を塗った「地割印傳」「松皮印傳」や、多様な染革の装飾技法によって製作された洒落た莨入れを特集展示しています。
江戸の人々の心意気や文化をお楽しみください。
【提物―洒落た莨入― 平成30年6月23日(土)~9月9日(日)】*7/14~9/9小・中学生入館無料