鹿革の財布 ー銭入あれこれー

財布は主に硬貨や紙幣をはじめ、身の回りの大切なものを携行する袋物の一つです。日本の貨幣の歴史と衣類の変化、携帯方法や流行などを反映して様々な形式が生み出されてきました。
砂金・銅銭・切銀などを入れる袋は古くから用いられていたようです。紐で口を括る巾着や、紛失や盗難を防ぐ仕様にもなる早道は着物の帯に提げて持ち歩くことが出来る利点があります。紙入は金銭の他に楊枝や薬などを入れる口がいくつかあり、利便性が追求された品が生まれました。後に紙入から発達した二つ折や三つ折財布は大いに流行し、時代と共に複雑な形状や素材、意匠など趣向を凝らした品がつくられるようになりました。装飾方法では染色や漆付け技法の他に吹き絵による縁起の良い模様が施された例も見られ、金運を願う気持ちは今も昔も変わらないことを示しています。
金銭を持ち歩く風習が一般化したのが近世以降とされ「財布」という言葉が使われるようになったのは江戸後期からです。厚革で作られた印傳の三つ折財布は「三ッ巻」とも呼ばれ、丈夫な財布として庶民に好まれたそうです。
現代の財布は紙幣や硬貨以外にカードや身分証など身近な大切なものを一切合切入れる大型のものから、小銭入や札挟みのように用途に特化したものまで幅広く存在しています。スマートフォンの普及により急速に生活様式は変化しつつありますが、財布にまつわる文化を鹿革の財布を通じてご覧ください。
【鹿革の財布-銭入あれこれ- 令和3年3月6日~6月6日】