印傳の装飾ー粋な革羽織ー

革羽織は火事の多かった江戸時代に火消が着用したといわれています。江戸後期の風俗について書かれた『守貞謾稿』には男性の服飾の項に『革羽織之事』とあり、黄色の燻革の革羽織が武家では防火服として着用され、市民には火事場だけでなく冬の防寒着とされていたことが書かれています。
以降、明治時代にかけては鳶職の頭や棟梁などが着用し、歳の市には革羽織を粋に着飾って出掛けたそうです。また大きな商家では使用人や出入りの職人の晴着用として支給されました。
革羽織は厚い鹿革で出来ており、重量感のある服飾となっています。主に稲藁などの煙によって染色する「燻技法」によって作られ、模様が施されています。革羽織は火の粉をかぶっても燃えにくかったなどの逸話もあり、燻革の難燃性が役立ちました。
素材には「地鹿」と呼ばれた大きな革を用いたことから背に継ぎ接ぎは無く、大胆に配された角字や繊細な縞模様といった革羽織特有の装飾に活かされています。
今回は当館所蔵の革羽織四十七領の中から火事装束・商家の晴着・打裂羽織など特徴ある資料を陳列しています。粋な伊達着としての革羽織とその意匠、染色技法の違いをお楽しみください。
【印傳の装飾 ―粋な革羽織— 令和5年9月16日(土)~11月26日(日)】